【Inventorの概要】

目次

Inventorとは?

Inventorについて紹介します。
Inventor(インベンター)は、Autodesk社が提供する機械設計向けのミドルレンジの3DCADツールで、3D機械設計、図面作成、シミュレーション、動作解析など、機械設計に必要な機能を搭載しつつ、費用も他のCADツールに比べ安価と、コストパフォーマンスに優れた機械設計ツールです。

Inventorの歴史

【1990年~2000年】

 パソコンとAutoCADの普及によって中小企業向け2次元CAD市場では圧倒的なシェアを持っていたAutodeskでしたが、PTCがリリースした3次元CADツール Pro/ENGINEERは、それまでのCADと一線を画す使いやすさで急速に普及し、大企業との取引を持つ中小企業でもCADの3次元化の需要が高まっていました。

 この市場の要望に対しAutodeskは、AutoCADの持つ2次元図面の資産を活かしながら、3次元の描画も可能なAutodesk Mechanical Desktopをリリースしました。 これはAutoCADを基本システムとして3次元モデルも作成できるようにしたもので、基本操作はAutoCADと同じでした。しかし、3次元化を実現するためコマンドが増えるとともに、MS-DOS時代の操作環境を継承しており、3次元モデリングは容易ではありませんでした。

一方、競合他社ではAutoCADと同じ市場をターゲットとしたSOLIDWORKSSolid EdgeといっミドルレンジCADと呼ばれる価格を抑えたCADが販売され、これまで一部の大手企業だけが使用できた3次元CADの導入ハードルが低くなり、中堅・中小企業にも3次元CADが普及していきました。
 また、Windows95が販売されたことにより一般家庭にも急速にパソコンが普及し、MS-DOSからグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)のパソコンが広まっていたため、扱いやすいWindows準拠の動作環境や、フィーチャーベースモデリング(モデルの作成、修正の履歴管理ができるモデリング手法)や、2次元図面の作図機能も充実させてきたため、ミドルレンジの3次元CAD製品に人気が集まり、AutoCADの市場も奪われかねない情勢となっていました。

 そこでAutodeskはこれに対抗すべく1999年にInventorをリリースししましたが、当初はまだ2次元図面の需要が高いことから、Autodesk社もユーザーはAutoCADの資産を捨てられまいと見ていたため、Autodesk Mechanical Desktopとの併売でした。Autodesk Inventorは、他のミドルレンジ3次元CADと同様の操作環境を実現するため、まったく新しいプログラムとして登場し、オートデスク製品でありながら、AutoCADの図面を満足に読み込めないというAutoCADユーザーにとっては不十分な製品である上、モデリング機能や大規模モデルへの対応などで競合他社製品から大きく劣っていたため、Inventorの販売は全く伸びませんでした。

【2000年~2010年】

 CAD市場では3次元化が進む中で、他社製品にシェアを奪われるばかりであったAutodeskは、開発とマーケティング・プロモーションの軸足をInventorへ移し、2005年にリリースされたバージョン10からはAutoCAD図面にもほぼ完全に対応したことにより、他社製品とも対等な位置で競争が可能となってきました。
 また競合製品に比べて劣っていたユーザーインターフェースや図面作成、大規模アセンブリへの対応も徐々に機能改善されていきました。

【2010年~】

 現在では、パラメトリックモデリング、シミュレーション、フリーフォームモデリングなど、多彩な機能を備えたツールとして広く利用され、他社のミドルレンジCADよりもライセンスフィーが安価であることから、製造業を中心にシェアを伸ばし、現在では後述のとおり高いシェアを獲得しています。
 2013年には、Inventorの機能を継承したFusion360の提供を開始し、現在では「個人利用、学生、スタートアップ企業」いずれかの条件に該当すれば、機能が制限された「無料ライセンス版」を使用でき、個人がCADを使ってアイディアやイメージを形にできるようになっています。

Inventorの強み

Inventorを用いる強みとして、主に以下の3つが挙げられます。

  • 共有ビューの機能でフィードバックを共有
  • Revit、Fusion、Plant3Dなど他のAutodesk製品とのデータ親和性・互換性の高さ

① 共有ビューの機能でフィードバックを共有

 共有ビューは、すべてのAutodesk製品に実装されている機能で、クラウド上にモデルを共有することができ、顧客やチームにコメントを求めたり、営業担当者が客先でのプレゼンテーションで簡単に利用が可能となります。共有ビューはWebアプリのためリンクを送信するだけで、オートデスク製品をインストールしていない環境でも3Dモデルや図面の表示、コメントすることができます。誰かが共有ビューにコメントすると、電子メールが送信されます。コメントの表示や返信、共有ビューの管理はInventorから直接行うことができます。

② iLogicを用いたモデリングや業務プロセスの自動化

iLogicは、Inventorに搭載された設計自動化ツールで、プログラミングによってルールベースのモデリングが実現できます。これにより、設計者のミスを減らしつつ効率的に作業を進めることができ、例えば、設計変更の迅速な反映や特定条件に基づくカスタムルールの作成などが可能です。
iLogicを活用することで、設計の品質と柔軟性が向上し、モデリング作業や業務プロセスを大幅に簡素化できます。

③ Revit、Fusion、Plant3Dなど他のAutodesk製品とのデータ親和性・互換性の高さ

Inventorで作成したモデルをrfa、ifc、adsk形式に変換し、RevitやPlant3Dで配置設計を効率的に行うことができます。
属性情報や配管接続情報を持たせて変換することができるため、シームレスな連携が可能です。

 建築設計ツールRevitで作成した建築モデルをACC(Autodesk Construction Cloud)でデータ変換してInventorに取り込むことができます。
これより建築に合わせながら効率的に機械の設計することができます。

Inventorのシェア

 ENNが2025年1月にプラントおよび建設エンジニアリング業界50社を対象に行った、エンジニアリングITソフトウェアの使用状況に関するアンケートによると、「機械設計CADとして、どの種類の2/3次元CADを使用していますか?」との問いに対し、Inventorと答えた企業は55%(複数回答可)で、トップとなっています。

 プラント業界ではこれまでAutoCAD(拡張子:dwg)で設計・図面作成していることが多いことや、建設業界でもAutodesk Revitがシェアが高いため、Autodesk製品どうしのデータ互換性の高さや連携がスムーズなことが大きなメリットだと考えられます。
 アンケートの詳細については、㈱重化学工業通信社発行 ENN-net 2025年2月25日号をご購読・ご参照ください。⇒エンジニアリング・ネットワーク│ENN-net

費用

InventorはAutodesk社の公式サイトから契約することができます。
契約体系は以下の3つから選択することができ、年間プランは1年と3年から選択することができます。
特に毎日のように使用するヘビーユーザーは、年間契約の方が割安となります。

 Flex契約は1 日単位で製品を利用できる従量課金制のプランで、事前購入したトークンと引き換えに、Flex 対象製品に 24 時間アクセスできます。様々なAutodesk製品を使用したい場合や、使用頻度が低いユーザーにメリットがある契約ですが、1日の使用単価としては高くなります。
決済方法は、クレジットカード・・PayPal・銀行振込・コンビニ決済でお支払い可能です。

 30日間の無料トライアルも利用できますので、個人で利用される方はまずはこちらを使用されるのが良いかと思います。⇒体験版の取得 | Inventor 2022 | Autodesk

 他にもProduct Design & Manufacturing Collectionには、InventorAutoCAD PlusFusionInventor NastranInventor Tolerance Analysis3Ds MaxVault Basicと設計者・エンジニア向けの主要なCADが含まれて年間ライセンス¥508,200(月間プラン:¥63,800)と、さらにお得なパッケージが用意されています。
 ちなみに上記CADツールをすべて単品購入した場合の合計は¥2,150,500となり、76%も安いということになります。(Nastran、Tolerance Analysisの年間ライセンスがそれぞれ¥508,200なので、これらを単品で購入する理由がありませんね。)
 Inventorのデータ管理ツールであるVaultとセットで購入する場合は、こちらのパッケージをオススメします。

動作環境

 Inventorを購入する前に、まずは動作環境をしっかり確認しましょう。
 快適に作業するためにはCPU性能よりも、メモリ容量32GB以上を重視しましょう。
 その他にグラフィックスは8GBのGPU、画面解像度4Kのモニターも推奨されております。

 詳しくはAutodesk公式サイトを確認ください。
 ⇒Autodesk Inventor 製品の動作環境

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